こんにちは。村上です。
前回は不妊の原因となる「ミトコンドリアの減少」について簡単に解説しました。
このミトコンドリア、男性不妊の原因としても大きいようです。
ミトコンドリアは精子にもエネルギーを供給しているため、減少すると精子の運動率が下がるようです。
今回は、男性の妊活に知っておくべき知識として、精子とミトコンドリアの関係について解説します。
【このページの目次】
ミトコンドリアは精子をつくる源にもなる
精子は男性の睾丸に貯蓄されます。
精子の増産を司るのは男性ホルモンであり、ホルモンバランスが乱されていると、睾丸に貯まる量が低下し、射精の量が減ります。
精子の健康と量を決めるのは男性ホルモンだとよく世間一般では言われていますが、それが全ての源ではありません。
細胞レベルでそのエネルギーを作っているのがミトコンドリアです。
このミトコンドリアの減少が、男性不妊の原因として注目されているのです。
男性の精子は減っている?ミトコンドリアの減少が原因か
最近、若い男性の精力が低下して来ていると言われています。
イギリスの研究によると、ここ40年で先進国の男性の精子は50%以上も減っているのだそうです。
若者の草食化、と言えば聞こえは良いですが、活発な精子を作れない20代から30代の男性が増えています。
今までこの世代なら特別な対策をしなくても、心身の健康を維持出来ると考えられていました。
しかし、最近の若者は実にシビアな労働環境と生活環境を強いられています。
低賃金労働で毎日長時間、ストレスフルな仕事を強いられており、ミトコンドリアの活動量が低下しています。
根本的なエネルギー源であるミトコンドリアが元気を喪失していたら、成人男性としての生殖機能も減退します。
実際に統計的にも若い男性の出す射精時の量、そして鞭毛運動の活発さが減ってきていると報告されています。
鞭毛運動が正しく行われなと、男性が膣に射精しても、肝心の着床が起きづらくなります。
減退の原因はストレスや偏った食生活、心労による暴飲暴食や精神の疲労、そして睡眠不足によって誘発されます。
ミトコンドリアが減ると精子の運動率が下がる
ミトコンドリアが生活習慣の影響で減ると、精子の運動率が下がります。
若い男性が突然EDになってしまう事はありません。
しかし、ミトコンドリアの減少で運動率が低下すれば、射精できていても不妊になることは十分ありえます。
男性のペニスから射精された精子は、膣の奥に位置する子宮まで泳がなければいけません。
精液の中には数え切れない程の精子が入っており、酸性の膣の奥へ到達出来るのは、ほんの一握りです。
オタマジャクシのように自力で子宮まで泳がなければならず、精子のエネルギー不足が起きていると、射精された精液に含まれる全てが、子宮に到達する前に死んでしまいます。
精液の質や量と活動量はまた別問題であり、男性が若くて勃起力や精液を大量に出せる体力があっても、肝心の細胞レベルの働きが弱っていれば本末転倒なのです。
国立研究開発法人科学技術振興機構の研究でも、この事は裏付けられています。
本研究では、 男性不妊の症例において、運動能の低下した精子からミトコンドリアゲノムの突然変異が検出されていること、2 ミトコンドリアは細胞の運動に必要なエネルギーの大部分を生産していること、に着目して、ミトコンドリアゲノムに突然変異を導入したマウスの男性機能を解析しました。その結果、突然変異が導入されたマウスでは、精子数の減少と精子運動能の低下が起り、重度の男性不妊に陥ってしまうことが分かりました。
そして、ミトコンドリアゲノムの突然変異によるエネルギー欠乏が精細胞の減数分裂の停止を誘発し、これが精子数の低下の原因となっていることを突き止めました。
本研究は、ミトコンドリアからのエネルギー供給が精細胞の分化に必要不可欠で、その異常が男性不妊の直接的な原因になることを世界に先駆けて証明しました。
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20061003/index.html
このため、妊活においては男性の側もミトコンドリアの減少による老化を意識することが重要です。
まとめ 男性不妊もミトコンドリアの減少が原因となる場合がある
・ミトコンドリアの減少で精子の数や運動率が落ちる
・ミトコンドリア減少が男性不妊の原因となるケースも多い
男性不妊の原因は様々ありますが、そもそも子作りに支障をきたすEDや膣内射精障害などを除けば、精子の運動率低下というのが一番大きな原因と言われています。
そうなってしまうのも、ミトコンドリアの減少が原因というケースが多く、妊活におけるミトコンドリアの重要性は男女共通という事ですね。
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